法話集

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読む法話「救いを告げるお方」 (菊池市 菊池組 照嚴寺 髙田聡信)

2024/06/01 09:00

 阿弥陀という仏さまは、私たちに教えを告げられません。また教えを告げて私を育てるというお方でもありません。なぜならば、教えを告げたところでとらわれから一歩も離れることはできずに、煩悩を燃やし続けることしかできない私のことをよくよくご存じであったからです。教え育てようとしても、育てることができない私の状況をよくよくご存じであったからです。唯一つ救いを告げられるのでした。いつでもどこでも、この私を必ず救うと聞かせてくださるのが阿弥陀さまのお慈悲です。

 お寺によくおまいりになられる女性の方がいらっしゃいます。重い病気を患われまして、その入院中に出逢った看護師さんのことを私に話してくださったことがありました。

   大手術の後の傷口を毎日消毒してくださいました。そのとき看護師さんは一度も「痛いですか」と尋ねたことがあ
  りませんでした。いつも消毒しながらかけてくださる言葉は「痛いですね」「痛いですね」でした。この看護師さん
  の言葉に、私は思わず涙が止まらなかったのです。日頃から親戚やお友達、そして家族からも「大丈夫だから」「よ
  くなるから」と励まされていました。みんなが親身になって心配してくれているのをヒシヒシと感じたからこそ、そ
  の心がとてもうれしかったのです。そしてそれが私の大きな力になりました。でも、本音は怖かったんです。辛かっ
  たんです。逃げたかったんです。誰かにその本音を聞いてほしいと思ったけれど、誰にも言えませんでした。なぜな
  らみんな私を熱心に応援してくれていたからです。みんなの期待を裏切るようなことはしたくない、心配かけさせた
  くないと思ったからいつのまにか自分の本音を言えなくなっていました。その心の中に隠し張りつめていたものを寄
  り添い解きほぐすような言葉が「痛いですね」でした。その言葉に出逢った時に、思わず私は隠していた心の涙を隠
  すことができませんでした。

というお話でした。

 阿弥陀さまは、私の苦しみ悲しみをすでに知っているといつもご一緒してくださいます。そしてただご一緒してくださるだけではなく、あらゆる功徳を私に振り向けて根こそぎ救うと願いはたらいてくださるというのが阿弥陀という仏さまです。

 お念仏の生活は仏さまの確かな救いをよろこばせていただく日々であります。殺伐としていのちの触れ合いが少なくなってきている昨今、私だけでなく孤独感に襲われがちなすべての方々が、仏さまの温かい眼差しといのちの有り難さに触れてくださればと思います。