法話集・寺院向け案内

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読む法話「法を聞くということ」 (熊本市 託麻組 眞法寺 眞壁法城)

2025/12/01 09:00

先日、私の住む校区で開催された「マイタイムライン研修」というものを受講しました。

 マイタイムラインとは、災害の際の避難に向けての段取り表のことです。

 前もって水害や台風などの災害に対して、

 ①いつ避難を始めるか

 ②何を持って避難するか

 ③どの道を通るのか

 ④どこに避難するか

などを決めて家族で情報を共有し、いざというときに備えておくことが大切だとのこと。

 最近では「ハザードマップ(防災マップ)」とともに、自治体のホームページでその重要性が紹介され、小学校の社会の教科書などでも取り上げられているそうです。
 

 色々とためになるお話を聞かせていただいたのですが、私にとって特に興味深かったのは、災害の際に、なぜ避難が手遅れになりがちなのかということについての説明でした。

 そこには「正常性バイアス」と呼ばれるものが大いに関係しているということでした。

 バイアスとは、偏見や先入観のことであり、人間の正常な判断を狂わせる原因となるものです。

 「正常性バイアス」とは、多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内であるととらえ、心を平静に保とうとするはたらきのことだそうです。

 例えば、朝起きて少しくらいのどがイガイガしていても、この「正常性バイアス」がはたらくために、「コロナになったんじゃないのか!どうしよう?」とパニックになることなく、「最近、乾燥してきたから風邪の初期症状かな。今日は体調管理に気をつけて過ごすようにしよう。」みたいな感じで冷静に対処することができます。

 心のストレスを軽減させるバリア機能ですので、悪い事ばかりではないのですが、これがくせもので、せっかくいろんなサインが出ているのに、「私は大丈夫。」といってそのサインを見落としてしまうのです。

 それが災害避難の際には、逃げ遅れにつながるということでした。

 思えばそれは、災害避難の場だけではありません。

 仏教では諸行無常を説きます。いつ終わるか分からないいのちと聞き、確かにそうだとうなずきながらも、色んな事を明日へ明日へと先延ばししている私であります。

 せっかく「いつ死ぬか分からんとよ。今しかないとよ。」と教えてもらいながらも、「そうはいっても人はそんな簡単には死ぬもんじゃない。今までずっと大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう。」と聞き流してしまうのです。

 ただ、そんな私でもうっかり聞き流せないときがあります。それが身近な方、大切な方の葬儀の場です。そのときばかりは、素直に「そうでしたね。」と諸行無常の理を受けいれる私がいます。ふだんは法を聞き流してしまう私に、自然に法を聞かせる場が葬儀の場なのです。

 私は住職ですから、葬儀の際は、御門徒の方を送らせていただくことが圧倒的に多く、亡くなった方をお敬いして大切に葬儀を勤めるのですが、ご遺族だけでなく送らせていただく私自身にとっても葬儀の場は本当に大切なのです。

 今回は校区の防災に関する研修会ではありましたが、改めて、大切なことを気づかされたご縁でありました。